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ペットボトルのような“当たり前”のリサイクル――第一三共ヘルスケアが展開する「おくすりシート リサイクルプログラム」の次なる挑戦

第一三共ヘルスケアがサステナビリティ活動の一環として取り組んでいる「おくすりシート リサイクルプログラム」。この取り組みの未来について岩城純也氏にお話を聞きました。

第一三共ヘルスケアがサステナビリティ活動の一環として取り組んでいる「おくすりシート リサイクルプログラム」。なぜ、おくすりのパッケージは、これほどリサイクルが難しいのか。小さく軽いおくすりシートを、本当に回収できるのか。そんな問いから始まった本プログラムも2022年の開始から約3年半。

新たな段階に差し掛かるこの取り組みの未来について、同社 サステナビリティ推進マネジャーの岩城純也 氏に話をお話を聞きました。



「おくすりシート リサイクルプログラム」は、自治体の協力のもと、エリア内の薬局やドラッグストア、病院、公共施設などに専用の回収BOXを設置し、生活者から使用済みのおくすりシートを集めることからスタートした。当初は、「本当に集まるのだろうか?」という不安もあったというが、そんな心配をよそに開始直後から順調に回収が進み、今では多くの生活者の支持を得ている。

岩城:2022年のプログラム開始当初から協力してくださっている神奈川県・横浜市に加えて、2025年12月からは東京都・東大和市でも回収がスタートしました。おかげさまで東大和市でもすでに60キロを超えるおくすりシートが集まっていて、この約3年半で回収したおくすりシートの総量は20トンを超えるほどです(2026年5月末時点) 。

回収量が増える一方、リサイクルにあたっての課題が浮き彫りになった。おくすりシートはアルミとプラスチック が圧着されている。加えて、市中回収でプラスチックの種類が複数混在しているため、再資源化のハードルはかなり高い。

岩城:リサイクルの方法は大きく3つに分類されます。燃えるゴミなどの焼却時に発生する熱エネルギーを再利用する「サーマルリサイクル」、廃棄物を新たな製品の原料に変える「マテリアルリサイクル」、そして、プラスチックなどの廃棄物を化学的に分解してガスや油などの化学原料に変える「ケミカルリサイクル」です。

現在、「おくすりシート リサイクルプログラム」ではアルミとプラスチックを分離せず、そのまま再資源化する「マテリアルリサイクル」を行う効率的な方法をメインに開発しています。しかし、本来異なる性質を持つアルミとプラスチックを混合したまま再利用することは容易ではありません。さらに、シートに使用されているプラスチックも、PP(ポリプロピレン)やPVC(ポリ塩化ビニル)など複数の種類が使われており、その複雑さが取り組みの難易度を一層高めていて、チャレンジの連続です。

皆さまのご協力によって、おくすりシートの回収量が右肩上がりで増える中 、より効率的にリサイクルを進めるために、これまでとはまったく違う「次の一手」も必要だと感じていました。

プログラムを拡大していく中で、大規模かつ効率的な、環境にやさしいリサイクル方法 として岩城が注目したのは、CO2排出量が少なく残物(灰や不燃物)を資源化することができる 「ケミカルリサイクル」だった。

岩城:私たちが挑戦しているケミカルリサイクルは、おくすりシートを高温で気化させて精製合成ガスを作り、それをエタノールやメタノール等に変えることが目標です。実はこのメタノールからプラスチックを作る技術もあるので、ペットボトルのように、使用済みの製品を原料として再び同じ種類の製品を製造し、循環させる「水平リサイクル」 の実現に向けた可能性も見えてきた。 この「ガス化」が実現できれば「おくすりシート リサイクルプログラム」は大きく発展させることができると感じていました。

ガス化によるメリットはそれだけではない。効率よくおくすりシートをリサイクルすることができ、さらにマテリアルリサイクルで課題だった混在するプラスチックの問題をクリアする可能性も秘めていた。

岩城:実は、ケミカルリサイクルはプログラム開始当初から検討していました。ハードルとなっていたのは、リサイクル技術を提供してくれるパートナー企業探しです。おくすりシートの回収工程を考えると、プラスチックの分別が不要で、輪ゴムなど多少の不純物も含めて一気に処理できる技術が必要でした。「サーマルリサイクルなら処理が簡単になる」という提案をいただくこともありましたが、当社のサステナビリティ方針は「人と社会と地球が健やかであり続ける」こと。より環境負荷の少ない方法でのリサイクルを模索し続けました。

約3年にわたる地道な情報収集と打ち合わせの中で出会ったのが、さまざまなリサイクル技術やスキームを構築して持続可能な循環型社会の実現に取り組んでいる「JFEエンジニアリング」(以下、JFE エンジ)だった。

岩城:当社はJFEエンジさんとまったく接点がなかったので、まずは公式サイトの問い合わせフォームから連絡を取りました。複数種類のプラスチックが使われていることや不純物の混在という課題は相変わらずでしたので、正直、会いに行ったときの気持ちは「ダメもと」。しかし話を進める中で、PPとPVCの混在や一度に処理するシートの量、そしてケミカルリサイクルへのこだわりを含めて、JFEエンジなら当社の希望する形でのリサイクルができるかもしれないという結論に至りました。「チャレンジしてみましょう」という言葉をいただいた時は嬉しかったですね。



理論上は、おくすりシートでも調整すればガス化できる――長年の知見と積み上げた技術からそうした見通しはあった。しかし、岩城自身にとっては経験のない取り組み。「理屈では分かっている。けれど、本当に大丈夫だろうか」。そんな思いがよぎる中で、実証試験は始まった。

まずはおくすりシートを一度に気化 し、合成ガスが生成できるかを検証。――結果は、無事成功。実証試験は、期待通りの成果をおさめた。

岩城:塩素 (塩)を含むPVC素材のハードルが特に高く、パートナー企業探しは難航を極めました。ここに辿り着くまで多くの会社さんに相談しては、ハードルが高く対応が難しいとして見送られることが続いていましたし、取り組みが何度も白紙に戻るうちに心も折れかけていました。そういうわけで、実証実験の結果が出るまでは気が気ではありませんでした。JFEエンジさんにとってもチャレンジングな検証でしたし、失敗に終わる可能性もゼロではなかった。そんな中、想定通りの結果が得られたことに、まずは安心しました。

実証試験の成功で見えてきたのは、第一三共ヘルスケアが目指す「水平リサイクル」の実現だ。ペットボトルのようなリサイクルシステムをつくれるかもしれない。そんな兆しが見えたことも大きな成果だった。

岩城:使用済みペットボトルが別のプラスチック製品に生まれ変わることは、社会の「当たり前」として定着しています。今回のガス化実証試験の 成功は、おくすりシートがペットボトルのようにリサイクルされるのが「当たり前」になる未来への第一歩といえるでしょう。



今後、JFEエンジは大規模プラントの建設を予定している。このプラントが稼働して一度に処理できるおくすりシートの量がさらに増えればプログラムの規模拡大も夢ではない。 岩城:大量のおくすりシートを一度に処理できるようになれば、より多くの自治体や、自治体以外のルートにもプログラムを拡大していくことができます。「おくすりシート リサイクルプログラム」はここから次のステージに突入するのです。 ただし、おくすりシートのリサイクルはガス化がすべてではない。これまで取り組んできた、目に見える、触れられるものに再生させるマテリアルリサイクルにおいても、挑戦を続けている。 岩城:回収にご協力いただく皆さんにとって、「何にリサイクルされるのか」も重要です。最近では、当社のイベントで粉砕したおくすりシートを使ったワークショップを開催しました。私も娘と一緒に参加して、コースターなどの小物をハンドメイドしたのですが、日常的に使用しているおくすりシートがどんな「物」に生まれ変わるのかをダイレクトに伝えられると納得感が増すことを肌身で感じました。感じるリサイクル、触れるリサイクルについては製品を増やし ていきたいと、改めて考えています。また、アルミとプラスチックの剥離についても同様です。アルミはアルミに、プラスチックはプラスチックに再生できれば活用先が明確になり幅も広がる。これも私たちが目指している一つの形なので、技術的なチャレンジを続けていきます。

ここまで、スピード感をもってリサイクルの手段や手法を発展させてきた「おくすりシート リサイクルプログラム」 。おくすりシートを回収できなければ成り立たない取り組みだけに、各所への感謝も忘れない。

岩城:ご協力いただいた生活者の皆さまや回収拠点の方々に対しては、心からの感謝を伝えたいです。本当にありがとうございます。このプログラム自体、「分別や資源に対する認知度を高める」というところからスタートしているので、おくすりシートのリサイクルをきっかけにさまざまなリサイクルに関心を持っていただけるとうれしいです。

サステナビリティサイト「Wellness for Good」:www.daiichisankyo-hc.co.jp/wellness-for-good/

国際連合広報センターサイト「JAPAN SDGs Action Platform」における「持続可能な開発のための2030アジェンダ 仮訳(PDF)」によると、以下のように記載があります。

目標12. 持続可能な生産消費形態を確保する
4.1 2030 年までに、すべての女児及び男児が、適切かつ効果的な学習成果をもたらす、無償かつ公正で質の高い初等教育及び中等教育を修了できるようにする。
4.2 2030 年までに、すべての女児及び男児が、質の高い乳幼児の発達支援、ケア及び就学前教育にアクセスすることにより、初等教育を受ける準備が整うようにする。
4.3 2030 年までに、すべての女性及び男性が、手頃な価格で質の高い技術教育、職業教育及び大学を含む高等教育への平等なアクセスを得られるようにする。
4.4 2030 年までに、技術的・職業的スキルなど、雇用、働きがいのある人間らしい仕事 及び起業に必要な技能を備えた若者と成人の割合を大幅に増加させる。
4.5 2030 年までに、教育におけるジェンダー格差を無くし、障害者、先住民及び脆弱な立場にある子どもなど、脆弱層があらゆるレベルの教育や職業訓練に平等にアクセスできるようにする。
4.6 2030 年までに、すべての若者及び大多数(男女ともに)の成人が、読み書き能力及び基本的計算能力を身に付けられるようにする。
4.7 2030 年までに、持続可能な開発のための教育及び持続可能なライフスタイル、人権、男女の平等、平和及び非暴力的文化の推進、グローバル・シチズンシップ、文化多様性と文化の持続可能な開発への貢献の理解の教育を通して、全ての学習者が、持続可能な開発を促進するために必要な知識及び技能を習得できるようにする。
4.a 子ども、障害及びジェンダーに配慮した教育施設を構築・改良し、すべての人々に安全で非暴力的、包摂的、効果的な学習環境を提供できるようにする。
4.b 2020 年までに、開発途上国、特に後発開発途上国及び小島嶼開発途上国、ならびにアフリカ諸国を対象とした、職業訓練、情報通信技術(ICT)、技術・工学・科学プログラムなど、先進国及びその他の開発途上国における高等教育の奨学金の件数を全世界で大幅に増加させる。
4.c 2030 年までに、開発途上国、特に後発開発途上国及び小島嶼開発途上国における教員養成のための国際協力などを通じて、資格を持つ教員の数を大幅に増加させる。